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東京高等裁判所 平成4年(行ケ)73号 判決 1994年10月06日

大阪府大阪市北区梅田1丁目1番3-2700号

原告

矢野技研株式会社

同代表者代表取締役

矢野信吉

同訴訟代理人弁理士

北村修

鈴木崇生

室之園和人

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 高島章

同指定代理人

中村友之

佐伯義文

山田幸之

関口博

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

「特許庁が昭和61年審判第24270号事件について平成4年2月7日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

2  被告

主文と同旨の判決

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和58年6月29日、名称を「可撓継手」とする考案(以下「本願考案」という。)につき実用新案登録出願(昭和58年実用新案登録願第101294号)をしたが、昭和61年9月11日拒絶査定を受けたので、同年12月11日審判を請求した。特許庁は、この請求を昭和61年審判第24270号事件として審理し、平成2年10月8日出願公告をしたが、登録異議の申立てがあり、平成4年2月7日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年3月5日原告に送達された。

2  本願考案の要旨

内周面を球状凹弧面(2)に形成した継手本体(1)、この継手本体(1)の球状凹弧面(2)に外周球状面(7)を嵌合させたリング体(6)と、このリング体(6)を挿嵌させるスライド管(4)とよりなる可撓継手であって、前記継手本体(1)には、その球状凹弧面(2)の内周面に形成したシール部材(12)、(12)を装着し、その一端開口部(3)における継手本体(1)の軸線方向に対して直交する方向で対向する部分に、リング体(6)の両側開口端間の幅を有し、且つ球状凹弧面(2)に沿う切欠開口部(10)、(10)を形成してあり、前記リング体(6)には、その開口一端側における内周面に環状凹部を、他端側に環状空間部(8)を形成して、この環状空間部(8)の両端対向面にストッパー(9)、(9)を形成し、前記環状凹部を比較的広幅に形成して、この環状凹部の両端の仕切壁部間における内周面の開口側寄りに突起を形成し、さらに、前記スライド管(4)の開口側外周にロックリング(14)を装着し、前記リング体(6)を、その内周面に形成した環状凹部が継手本体(1)の開口側に位置するように球状凹弧面(2)内に嵌着するとともに、前記スライド管(4)をリング体(6)に挿嵌し、この連結状態において前記ロックリング(14)をリング体(6)の前記環状空間部(8)内に位置させて、リング体(6)の前記環状凹部にシール部材(13)を装着して、該シール部材(13)を前記突起によってスライド管(4)の外周面に挟圧させるべく構成してある可撓継手。(別紙図面1参照)

3  審決の理由の要点

(1)  本願考案の要旨は前項記載のとおりである。

(2)  これに対し、本出願前国内に頒布された米国特許第2376995号明細書(以下「第1引用例」という。)には、内周面を球状凹弧面に形成した管端膨出部(2)と、この管端膨出部の球状凹弧面に外周球状面を嵌合させたシーリングリング(4)と、このシーリングリング(4)を挿嵌させる他方の管(9)とより成る可撓継手が図面と共に記載され、更にそこには、(a):シーリングリング(4)の外周球面(6)と内周面とに形成された環状の溝(環状凹部)に各々シーリングリングガスケット(7)、(8)を装着すること、(b):管端膨出部(2)の開口部におけるその軸線方向に対して直交する方向で対向する部分に、シーリングリング(4)の両側開口端間の幅を有し且つ管端膨出部の球状凹弧面に沿う切欠溝(3)、(3)を形成すること、及び(c):管端膨出部(2)の軸線方向に対してシーリングリング(4)を直角方向に向けた状態にして管端膨出部(2)の切欠溝(3)に挿入した後、90度回動させて管端膨出部内に内装させて可撓継手を組立てること、が各々開示されている。(別紙図面2参照)

(3)  そこで、本願考案の可撓継手と第1引用例の可撓継手とを対比すると、両者とも可撓継手に関するものであり、本願考案の「継手本体(1)」、「切欠開口部(10)、(10)」、「リング体(6)」、「シール部材(12)」、「シール部材(13)」及び「スライド管(4)」は、第1引用例の「管端膨出部(2)」、「切欠溝(3)、(3)」、「シーリングリング(4)」、「シーリングガスケット(8)」、「シーリングガスケット(7)」及び「管(9)」に各々相当ないし対応するから、結局両者は、次の<1>ないし<4>の点で相違し、その余については実質的に同一のものと認める。

<1> 継手本体の球状凹弧面とリング体の外周球状面との間をシールするためのシール部材を、本願考案では継手本体の球状凹弧面の内周面に装着しているのに対し、第1引用例のものはリング体の外周球状面に装着している点。

<2> 本願考案では、リング体に、その開口一端側における内周面に環状凹部を、他端側に環状空間部を形成して、その環状空間部の両端対向面にストッパー(9)、(9)を形成し、更にスライド管(4)の開口側外周にロックリング(14)を装着し、該ロックリングをリング体の環状空間部(8)内に位置させ、リング体の環状凹部にシール部材(13)を装着させるように構成しているのに対し、第1引用例のものは、リング体の内周面に環状凹部に相当する溝を形成し、その溝にシール部材であるガスケットを装着させているものの、本願考案のようにリング体の内周面に環状空間部とストッパーとが形成されておらず、また、スライド管に相当する管(9)の外周面にロックリングを装着するように構成されていない点。

<3> 本願考案は、リング体の環状凹部を比較的広幅に形成して、その環状凹部の両端の仕切壁部間における内周面の開口側寄りに突起を形成し、環状凹部に装着したシール部材(13)を前記突起によってスライド管(4)の外周面に挟圧させるように構成しているのに対し、第1引用例のものはそのように構成されていない点。

<4> 本願考案は、その内周面に比較的広幅の環状凹部をと環状空間部を形成したリング体を、その環状凹部が継手本体(1)の開口側に位置するように球状凹弧面(2)内に嵌着するのに対し、第1引用例のものは、リング体を、その内周面に形成した比較的広幅の環状凹部が管端膨出部(継手本体)の中央に位置するように管端膨出部の球状凹弧面内に嵌着している点。

(4)  そこで、上記相違点について検討する。

<1> 相違点<1>について

継手本体の球状凹弧面とその凹弧面に嵌合されるリング体の外周球状面との間をシールするためのシール部材を、本願考案のように継手本体の球状凹弧面の内周面に形成させるか、あるいは第1引用例のようにリング体の外周球状面に形成させるかは、単なる設計上の微差にすぎず、シール部材を設ける点で本願考案と第1引用例のものとは実質的に異なるところがない。

<2> 相違点<2>について

2分割型ではあるが、その内周面を球状凹弧面に形成した継手本体と、その継手本体の球状凹弧面に外周球状面を嵌合させたリング体と、そのリング体を挿嵌させるジョイント管などのスライド管とからなる可撓継手において、スライド管がリング体から抜け出ることや奥部へ過度に移動することを防止するため、リング体の開口一端側の内周面にシール部材用の環状凹部を形成すると共に、他端側の内周面に環状空間部を形成して、その環状空間部の両端対向面にストッパーを形成し、更にリング体を挿嵌させるスライド管の開口側外周にストップリング(ロックリング)を装着し、そのストップリングをリング体の内周面環状空間部内に位置させ、かつ、リング体の内周面環状凹部にパッキン等のシール部材を装着させるように構成することは、実開昭56-66593号公報にも記載されているように従来より採られている周知の構成にすきず、したがって、本願考案と同じタイプである第1引用例の可撓管において、スライド管のリング体からの抜脱や内方奥部への過移動を防止するため、そのリング体の内周面とスライド管の外周面の構成として上記周知の構成を採用して前記相違点<2>として挙げた本願考案のような構成にする程度のことは当業者がきわめて容易に想到し得ることと認められ、その作用効果も予測し得るもので特に顕著なものがあるとは認められない。

<3> 相違点<3>について

一般に、シール部材を用いた管継手において、シール部材を挟圧してシール効果を高めるためにあるいはシール部材の位置保持のために、シール部材を収納する管継手の環状凹部の壁面に小突起を設けることは従来から採られている常套手段であり、また、その内周面にロックリング用の環状空間部とシール部材用の環状凹部を有するリング体を用いた可撓継手において、その環状凹部を広幅に形成すると共に、該環状凹部の両端の仕切壁部間の内周面に小突起を形成することは、実公昭54-33134号公報(以下「第2引用例」という。別紙図面3参照)に示されているように、本出願前すでに公知の事項である。したがって、リング体を用いた第1引用例の可撓継手において、そのリング体の内周面にロックリング用の環状空間部と環状凹部とを形成しようとする場合、本願考案のように環状凹部の仕切壁部間の内周面に小突起を形成するようなことは、シール部材を挟圧してシール効果を高めたり、あるいはシール部材の位置保持の改善のために、当業者が必要に応じてなし得る程度のものと認められる。なお、その際小突起の位置を本願考案のように仕切壁部間の内周の開口側寄りにすることは、スライド管をリング体の内部に嵌挿する際シール部材が環状凹部から外れたり抜け出たりしないようにするため当然考慮される事項であり、この点に考案が存在するとは認められない。

<4> 相違点<4>について

2分割型ではあるが、その内周面を球状凹弧面に形成した継手本体と、内周面にシール部材用の環状凹部とロックリング用の環状空間部とを形成したリング体と、スライド管とから成るこの種の可撓継手において、可撓継手のリング体を、本願考案のように、その内周面に形成した環状凹部が継手本体の開口側に位置するように該継手本体の球状凹弧面内に嵌着して、環状凹部の両側の仕切壁部によりスライド管を支持するように構成することは、実開昭54-76515号公報(以下「第3引用例」という。別紙図面4参照)に記載されているようにリング体の嵌着の一例として本出願前採られている公知の事項である。したがって、リング体を用いる第1引用例の可撓継手において、リング体としてその内周面にシール部材用の環状凹部の他にロックリング用の環状空間部を形成したリング体を用いる場合、本願考案のようにそのリング体の環状凹部が継手本体の開口側に位置するように該リング体を継手本体の球状凹弧面内に嵌着させ、環状凹部の両端の仕切壁部でスライド管を支持させるようにすることはリング体の嵌着の一実施態様にすぎず、この点に格別創意があるとは認められず、また、その作用効果も構造上自明のものにすぎない。なお、本願考案は環状凹部の幅を比較的広幅としているが、第3引用例の可撓継手においても、そのスライド管は、リング体の内周面に形成された環状凹部の両端の仕切壁部で支持される構造のものであるから、その仕切壁部間の長さ、即ち環状凹部の幅はスライド管を支持するのに必要な広幅になっているものと認められ、この点本願考案の環状凹部の広幅と実質的に変わるところがない。

(5)  以上のとおり、本願考案は、第1引用例の公知の考案に、第2引用例及び第3引用例に記載の公知の事項及び周知の事項を組合わせることにより、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができない。

4  審決を取り消すべき事由

審決の理由の要点(1)、(2)、(3)は認める(但し、相違点<4>の認定のうち、第1引用例のものの環状凹部が「比較的広幅」であることは争う。)。同(4)<1>、<2>は認める。同(4)<3>のうち、シール部材を用いた管継手において、シール部材の位置保持のために、シール部材を収納する管継手の環状凹部の壁面に小突起を設けることが常套手段であること、内周面にロックリング用の環状空間部とシール部材用の環状凹部を有するリング体を用いた可撓継手において、環状凹部の両端の仕切壁部間の内周面に小突起を形成することは本出願前に公知の事項であることは認めるが、その余は争う。同(4)<4>、同(5)は争う。

審決は、相違点<3>及び<4>についての判断を誤り、かつ、本願考案の顕著な作用効果を看過して、本願考案の進歩性を否定したものであるから、違法として取り消されるべきである。

(1)  相違点<3>についての判断の誤り(取消事由1)

<1> 審決は、相違点<3>についての判断に当たり、シール部材を用いた管継手において、シール部材を挟圧してシール効果を高めるために、シール部材を収納する管継手の環状凹部の壁面に小突起を設けることは従来から採られている常套手段であるとしているが、この認定は誤りであり、したがって、本願考案のように環状凹部の両端の仕切壁部間の内周面に小突起を形成するようなことは、シール部材を挟圧してシール効果を高めるために、当業者が必要に応じてなし得る程度のものであるとした審決の判断も誤りである。

被告は、この種の管継手において、シール部材を挟圧してシール効果を高めるために、管継手の環状凹部の壁面にリブ状の小突起を設けることは、第2引用例(甲第6号証)の図面や乙第1号証、第2号証、第4号証からも明らかなとおり従来から採られている常套手段である旨主張する。

しかし、第2引用例には、「このパッキン18は、前記周溝11と管10の先端間の外周面に密着される。」(第3欄8行、9行)と記載されているにすぎず、同引用例の図面をみると、突起の直下の位置でパッキン18下面が折れ曲がっている。したがって、この突起は、パッキン(シール部材)の横滑りを止めるにすぎないものとみる外ないものであり、同引用例には、パッキンを突起でスライド管に挟圧することにより、シール効果を改善する旨の記載は全くない。仮に、パッキンの先端下面は折れ曲がっているのではなく、テーパ面が形成されているものであるとしても、テーパ面が形成されていること自体がパッキンの肉厚を減じているものであるから、スライド管の挿入による挟圧効果は、突起によって殆ど生じないか、きわめて僅かなものであり、パッキンの横滑りを止める単なる密着程度のものであって、シール効果を発揮する挟圧力を生じるものではない。しかも、同引用例の図面によれば、パッキンの上側表面に溝が形成されており、この溝と突起とが互いに嵌合して位置決めの作用をなすものであって、突起によってパッキンの挟圧効果は生じないものとみるべきである。

したがって、第2引用例によって、シール部材を突起で挟圧することによりシール効果を改善することが周知であるとすることはできない。

また、乙第4号証に記載されている考案は、本願考案のようなリング体を用いない、本願考案の管継手とは異種形式の継手に関するものである。しかも、同号証記載のものにおいて、内側管5の流体圧によりガスケット(シール部材)6の後端側に高い圧力がかかってきた場合、ガスケット6は内側管5と外側管3の開口側寄りの内側壁を形成する部分との隙間からはみ出しの現象を生じることとなるが、同号証の第1図に示すガスケット6は、圧縮リブを挟んで開口側寄りの部分(同図において圧縮リブより左側の部分)の方により大きな体積を有する構成としており、開口後端側の部分の体積が小さいので、高い流体圧によって圧縮リブによる挟圧作用が耐えられなくなり、該隙間からガスケットが抜け出てしまってシール効果を喪失するというトラブルにつながる。したがって、同号証の考案のシール効果は本願考案の場合と比べて決して高いものではなく、同号証は、シール部材を挟圧してシール効果を高めるために環状凹部の壁面に小突起を設けることが常套手段であることを裏付けるものとはいえない。

さらに、乙第1号証、第2号証記載のものにおける突起は、パッキングの硬い(圧縮変形し難い)ヒール部の溝に嵌合しているものであって、パッキングの溝部分が突起によって挟圧変形されるものでは決してなく、この部分においてシール効果を高めているということはない。

<2> 審決は、小突起の位置を本願考案のように仕切壁部間の内周の開口側寄りにすることは、スライド管をリング体の内部に嵌挿する際シール部材が環状凹部から外れたり抜け出たりしないようにするため当然考慮される事項である旨判断しているが、この点も誤りである。

別紙参考図の第1図(イ)に示すように、突起(21)の位置を仕切壁部間の内周の開口側寄りにした場合、スライド管(4)がシール部材(13)に入り込む際に、環状凹部の開口側の仕切壁部と突起(21)との間の長さlの部分が圧縮される。この圧縮される長さlの部分のシール部材の体積は、例えば突起(21)が仕切壁部間の内周の(開口側寄りではなく)中央部にある場合(別紙参考図の第1図(ロ))に圧縮される長さLの部分の体積よりも小さいから、長さlの部分のシール部材は、長さLの部分のシール部材よりも圧縮されにくく、スライド管(4)が入り込むことができる大きさにまでその内径が拡径しにくい。したがって、突起(21)が仕切壁部間の内周の開口側寄りに位置している場合は、突起(21)が開口側寄りに位置していない場合に比べて、スライド管(4)をシール部材(13)に嵌挿するための大きな力が必要となり、この大きな力で押されるスライド管(4)の先端部が、リング体の内径より内方に突出しているシール部材(13)の内周部を引っかけて、スライド管(4)の挿入方向にシール部材(13)を押し出しやすくなる。

このように、突起(21)が仕切壁部間の内周の開口側寄りに位置している場合には、スライド管(4)をシール部材(13)に嵌挿する際に、シール部材(13)が環状凹部から外れやすくなったり抜け出しやすくなったりするから、突起の位置を、本願考案のように仕切壁部間の内周の開口側寄りにすることは、スライド管をリング体の内部に嵌挿する際、シール部材が環状凹部から外れたり抜け出たりしないようにするために当然考慮される事項では決してないのである。むしろ、このような構成は当業者であれば採用しないものである。つまり、本願考案は、スライド管をリング体に挿入する際にシール部材が環状凹部から外れやすくなったり抜け出しやすくなったりするにもかかわらず、当業者の常識に反して要旨のとおりの構成を採用することにより、一旦挿入した後は長期間にわたって優れた止水効果を発揮させるという、止水効果に重きをおいた構成を採用している点に特徴がある。

以上のとおり、本願考案のように、ことさら外周面に溝を形成していない広幅のシール部材を用いて、シール部材が環状凹部から外れたり抜け出たりすることを防止するために、小突起の位置を仕切壁部間の内周の開口側寄りにすることは、当然考慮される事項では決してないのである。

(2)  相違点<4>についての判断の誤り(取消事由2)

<1> 審決は、第3引用例(甲第3号証の2)には「環状凹部の両側の仕切壁部によりスライド管を支持するように構成すること」が記載されているとした上、同引用例の可撓継手においても、そのスライド管は、リング体の内周面に形成される環状凹部の両端の仕切壁部で支持される構造のものであるから、その仕切壁部間の長さ、即ち環状凹部の幅はスライド管を支持するのに必要な広幅になっているものと認められ、この点本願考案の環状凹部の広幅と実質的に変わるところがないとしているが、この認定、判断は誤りである。

第3引用例記載の考案の実用新案登録願書(甲第3号証の1)には、「ストップリング12がボールリングの空間9の内を摺動自在とする。」(第3頁12行ないし14行)と記載されていることからしても、同引用例の考案は、環状凹部の両端の仕切壁部でスライド管を支持するものではなく、環状凹部の両端の仕切壁部(凹溝周壁部)と、リング体の内周部のうちのストップリング12が当接している部位とでスライド管を支持するように構成されているものである。同引用例の図面第1図(別紙図面4参照)から判断しても、ボールリング6の端部がスライド管1から外れた場合、両凹溝周壁部と、ストップリング12が当接している部位とでスライド管を支持するようになっているとみる外ない。

このように、第3引用例の考案は、常に、凹溝周壁部と、ストップリングが当接している部位とでスライド管を支持するように構成されていることは明らかであり、凹溝の幅がスライド管を支持するのに必要な広幅であることは同引用例には全く示されていない。

<2> 被告は、第3引用例のストップリング12は外部からの異常な力によりスライド管1がボールリング6体内をスライドする場合、スライド管の移動と共にボールリングの空間部9の内周を摺動するが、その機能はスライド管の移動に際してスライド管がボールリングから抜け出るのを防止するためのものであり、スライド管を支持するためのものではない旨主張する。

しかし、スライド管が抜け出る方向へ移動するに際して、ストップリング12がボールリング6の空間部9の内周を摺動することになるが、この場合、ストップリング12がボールリング6の凹溝周壁の一端部に接当するまでの間、ボールリングの鍔8を介してスライド管1を支持することが明らかであるから、被告の上記主張は誤りである。第3引用例に開示されている自在継手は、スライド管の移動と共にボールリングが摺動する間、ボールリングの鍔8は「常に」ストップリング12に接当してこれを支持しており、本願考案の環状空間部(8)のリング体端部側ストッパー(9)の作用とは相違する。

また被告は、第3引用例のストップリング12は本願考案のロックリング(14)に相当し、両者は全く同一の機能を発揮し、両者に相違はない旨主張する。

しかし、第3引用例のストップリング12はスライド管がボールリングから抜け出るのを防止するための機能をもつと共に、スライド管を支持する機能を併せ有するのに対して、本願考案のロックリング(14)は、スライド管を支持する機能を有することなく、スライド管が一定範囲内に摺動するのを許容しつつ、リング体の左右いずれの方向にも過度の移動を阻止して、外れるのを防止する機能を有するものであって、両者は明らかに相違するものである。

さらに被告は、第3引用例の考案の接手は、ボールリング6の空間部9の端部がスライド管1から外れても、ボールリングの凹溝10の両仕切壁部間でスライド管を支持するように構成されていると主張しているが、第3引用例には、凹溝10の両仕切壁だけでスライド管を支持する程度に幅広に形成されているとの記載は一切なく、必ずしも正確でない図面において概略的、模式的に表された形状から、本願考案と同じ技術思想が開示されていると認定することは到底首肯することができない。

(3)  作用効果の看過(取消事由3)

<1> 本願考案は、リング体(6)の開口一端側に比較的広幅の環状凹部(22)を形成したことに加えてリング体(6)の開口他端側に環状空間部(8)を形成したことから、リング体(6)の両側開口端間の幅が広くなり、これら広幅リング体(6)に形成されている各空間(8)、(22)を仕切る壁(リング体(6)の両端の壁と、中央部近くのストッパー(9))により、常態でスライド管(4)を力学的に3点支持するので安定して支持することができ、シール部材に無理な力が加わりにくくなって、第1の止水効果を良好に発揮できる。

上記効果は、甲第2号証の2の第7頁8行ないし第8頁12行、同号証の3の第2頁9行ないし第3頁4行に記載された内容に照らしても、本願明細書に開示もしくは示唆されているものというべきである。

被告は、この種の可撓継手において、広幅のシール部材を突起で挟圧することにより、そのシール効果を改善することは第2引用例にも記載されているとおり本出願前周知である旨主張するが、この主張が理由のないことは前記(1)に述べたとおりである。

また被告は、シール部材用の環状凹部の広幅仕切壁部間でスライド管を安定に支持できることは第3引用例により周知である旨主張するが、同引用例はスライド管を安定に支持できる広幅の環状凹部を開示も示唆もしていないことは前記(2)に述べたとおりである。

<2> 本願考案は、環状凹部(22)の両仕切壁部間の内で継手本体開口部寄りに形成した突起(21)によって、シール部材(13)をスライド管(4)の外周面に挟圧させるべく構成したことにより、例えば、突起(21)を環状凹部(22)の両仕切壁部間の(開口側寄りではなく)中央部に配置して、その位置でシール部材(13)をスライド管(4)の外周面に挟圧させるべく構成した場合よりも、一段と優れた第2の止水効果を発揮できる。即ち、

前記突起(21)を環状凹部(22)の両仕切壁部間の内周の開口側寄りに配置した場合は、環状凹部(22)の開口側寄りでない方の入口から突起(21)の位置までは距離が長いから、途中のシール部材(13)と環状凹部内周面及びスライド管外周面との間の圧接により、抵抗されて、継手本体開口側への流れ出そうとする液圧は順次減殺され低下する。この圧力が突起(21)の位置まで到達すると、流路断面積が急激に縮小されていること、突起によりシール部材がスライド管外周面に挟圧されていることのため、これより下手側への流出は非常に困難である。仮に突起(21)の位置を突破しても液体の圧力は非常に減殺されている。したがって、突起(21)よりも下流側へ流れる液体の圧力が小であるから、突起(21)よりも下流側のシール部材の動きの自由度は、突起(21)の上流側におけるよりも大である。それ故、突起(21)より下流側においては液体がリング体(6)とスライド管との間のすき間から流れ出そうとすると、近くのシール部材も一緒に流れ出る方向に移動する傾向があるから、このすき間を通る液体の洩れ出しはシール部材によって阻害されやすい。これによって、環状凹部(22)からスライド管に沿う液体の洩れ出しは行い難いのである。

上記の作用効果は本願考案の構造に内在しているものであって、本願明細書及び図面に示唆されているものである。

また、本願考案は、スライド管(4)とリング体(6)との間のシールをリング体(6)の開口端側に施して、その奥部の環状空間部(8)の両端に形成したストッパ(9)、(9)に対してスライド管(4)の端部に装着したロックリング(14)によりスライド管(4)の抜け止め並びに過度の移動を規制してあるので、スライド管(4)とリング体(6)との間の水密性を保ちながら、スライド管(4)の長さを極力短くすることができて、継手本体(1)のフランジ(5)の位置を開口端から近い位置とすることができ、継手本体(1)自体を短いものとすることができる利点がある。

<3> 以上のとおり、本願考案はスライド管(4)及び継手本体(1)の長さを極力短くすることができながら、第1、第2の止水効果が相まって全体として良好な水密性の良い可撓継手が実現できるが、審決は、本願考案のこのような顕著な作用効果を看過したものである

第3  請求の原因に対する認否及び反論

1  請求の原因1ないし3は認める。同4は争う。審決の認定、判断は正当であって、原告主張の誤りはない。

2  反論

(1)  取消事由1について

<1> シール部材を用いた管継手において、シール部材を挟圧してシール効果を高めるために、管継手の環状凹部の壁面にリブ状の小突起を設けることは、第2引用例の図面や乙第1号証、第2号証、第4号証からも明らかなとおり、従来から採られている常套手段である。

原告は、第2引用例にはシール部材を突起でスライド管に挟圧することにより、シール効果を改善する旨の記載は全くなく、同引用例の図面をみると、突起の直下の位置でパッキン18が折れ曲がっているから、突起はシール部材の横滑りを止めるにすぎないものである旨主張する。

しかし、第2引用例の管継手のパッキンは、管の外周面とスリーブの浅い周溝との間のシールを目的として両者間に密着状態に装着されたものであり、同引用例の図面中にはパッキンが突起により挟圧されている状態が明瞭に図示されている。なお、パッキンの下面は折れ曲がっているのではなく、管の挿入を容易にするために通常パッキンの先端に形成されるテーパ面である。

<2> 原告は、請求の原因4(1)<2>の理由により、小突起の位置を本願考案のように仕切壁部間の内周の開口側寄りにすることは、スライド管をリング体の内部に嵌挿する際シール部材が環状凹部から外れたり抜け出たりしないようにするために当然考慮される事項ではない旨主張する。

しかし、シール部材の圧縮性はもっぱらシール部材の材質の弾性により左右されるものであり、その体積の大小により左右されるものではない。また、スライド管をリング体内のシール部材へ嵌挿する際、スライド管と仕切壁部間の内周との間で圧縮されるシール部材の体積は突起の位置により変わるものではない。なお、突起が仕切壁部間の内周の開口側寄りに位置している場合、スライド管をリング体のシール部材に嵌挿すると、まず、開口側寄りのシール部材は、スライド管の先端と仕切壁部間の内周面との間で圧縮変形され、その際、シール部材は突起にくい込まれ、そこの内周面に固定されることになる。そして、その後スライド管の先端を奥の方まで嵌挿しても、シール部材は突起により引っ掛けられているため、環状凹部から外れたり抜けたりしないのである。

(2)  取消事由2について

第3引用例のストップリング12は、外部からの異常な力によりスライド管1がボールリング6体内をスライドする場合、スライド管の移動と共にボールリングの空間部9の内周を摺動するが、その機能はスライド管の移動に際してスライド管がボールリングから抜け出るのを防止するためのものであり、スライド管を支持するためのものではない。一方、本願考案の可撓継手においても、ロックリング(14)(第3引用例の考案におけるストップリング12に相当する。)はリング体(6)の環状空間の内を摺動自在とするものであって、スライド管(4)が左方に移動した場合(別紙図面1の第1図)は、第3引用例の考案のストップリング12と全く同じ機能を発揮するもので、この点両者の間に差異はない。なお、第3引用例の考案の接手は、ボールリングの空間部9の端部がスライド管1から外れても、ボールリングの凹溝10の両仕切壁部間でスライド管を支持するように構成されているものであって、このことは、第3引用例の第3図に凹溝10の両仕切壁が厚くかつ幅広く図示されていることからも明らかである。

そして、第3引用例の伸縮自在接手においても、そのスライド管は、ストップリング12の摺動位置に関係なく、凹溝10の両端の仕切壁部間で支持される構造のものであるから、その仕切壁部間の長さ、即ち環状凹部の幅は同引用例の第3図からも明らかなとおりスライド管を支持するのに必要な広幅となっているということができる。

(3)  取消事由3について

<1> 原告は、本願考案は、リング体の開口一端側に比較的広幅の環状凹部を、開口他端側に環状空間部を各々形成したことから、各空間(8)、(22)を仕切る壁(リング体(6)の両端の壁と、中央部近くのストッパー(9))により、スライド管を力学的に3点支持して、安定して支持することができ、シール部材に無理な力が加わりにくくなって第1の止水効果を良好に発揮できる旨主張する。

しかし、本願明細書には、広幅のシール部材で良好な水密性が保たれることは記載されているものの、原告が主張する第1の止水効果については何ら記載されておらず、ましてや第1の止水効果とスライド管の安定支持との関係については示唆すらされていない。

仮に原告の主張する止水効果が本願明細書及び図面から読み取れるとしても、上記の止水効果は当該技術分野では周知の事項である。即ち、この種の可撓継手において、広幅のシール部材を突起で挟圧することにより、そのシール効果を改善することは第2引用例にも記載されているとおり本出願前周知であり、また、リング体の内周面に形成したシール部材用の環状凹部の広幅仕切壁部間でスライド管を安定に支持できることも第3引用例に記載されているとおり本出願前周知の事項であり、顕著な作用効果ではない。

<2> 原告は、本願考案は、突起(21)をリング体の環状凹部(22)の内周の開口側寄りに配置したことにより、突起の挟圧による止水効果に加えて、一段と優れた第2の止水効果を奏することができる旨主張する。

しかし、本願明細書には、環状凹部の内周面の開口側寄りに突起を形成したことにより、シール部材が突起により挟圧されて確実に水密性を維持することができること、及び水圧が高ければ高い程シール部材の側方からの水圧によりシール部材が圧縮されて水密性が大きくなるので、大きな水圧であっても良好な水密性を発揮することができることが開示されているだけであり、原告の主張するような第2の止水効果については何ら開示されておらず、ましてや第2の止水効果と環状凹部内周面の突起の配置との関係については示唆すらされていない。なお、水圧が高ければ高い程シール部材が水圧により圧縮されて水密性が大きくなるというシール効果は、当該技術分野ではセルフシーリング効果と呼ばれるように、本出願前周知のシール効果である。

また原告は、本願考案は、シールをリング体の開口端側に施し、その奥部にロックリングがストッパー(9)、(9)間に規制移動できる環状空間部(8)を形成したから、スライド管(4)の長さを極力短くすることができ、継手本体(1)自体を短いものとすることができる効果がある旨主張している。

しかし、上記効果は、シール用の凹溝10をボールリング6の開口端側に施し、その奥部にストッパーリング12が摺動する空間部9を形成した第3引用例に記載の接手においても有している構造上自明の作用効果であり、顕著なものではない。

第4  証拠関係

本件記録中の書証目録記載のとおりであって、書証の成立はいずれも当事者間に争いがない。

理由

1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、2(本願考案の要旨)、3(審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。

そして、審決の理由の要点(1)(本願考案の要旨認定)、(2)(第1引用例の記載事項の認定)、(3)〔本願考案と第1引用例記載のものとの一致点及び相違点の認定(但し、相違点<4>の認定のうち、第1引用例のものの環状凹部が比較的広幅であるとの点を除く。)〕、(4)<1>、<2>(相違点<1>、<2>に対する判断)についても、当事者間に争いがない。

2  取消事由1について

(1)  シール部材を用いた管継手において、シール部材の位置保持のために、シール部材を収納する管継手の環状凹部の壁面に小突起を設けることが従来から採られている常套手段であること、内周面にロックリング用の環状空間部とシール部材用の環状凹部を有するリング体を用いた可撓継手において、環状凹部の両端の仕切壁部間の内周面に小突起を形成することが本出願前公知の事項であることは、当事者間に争いがない。

(2)  そこでまず、シール部材を用いた管継手において、シール部材を挟圧してシール効果を高めるために、シール部材を収納する管継手の環状凹部の壁面に小突起を設けることが従来から採られている常套手段であるか否かについて検討する。

<1>(a)  乙第4号証(特開昭53-104422号公報)には、平面端部を有する内側管を外側管の開いたベル端部に挿入し、内側管と外側管との間にガスケットを配置した管継手用シールが記載されており、その管継手用シールの構造、作用について、「平面端部を有する内側管を外側管の開いたベル端部の中に入る式に挿入して成り、上記外側管のベル端部の中の軸方向に細長いグループの中に弾性ガスケットが配置され、上記グループは上記外側管のベル端部の中にガスケットを確実に保持する為の手段を備える様にした管継手用のシールにおいて、上記シールは、上記グループのガスケット保持手段の内側に配置された上記ベル端部の一対の間隔をおいた内側密封面の中間において、上記外側管(「外壁管」とあるは誤記と認める。)のベル端部と一体的に形成された圧縮リブを含み、上記リブは放射方向内向きに前記グループの中に突出して、前記ガスケットを前記内側管の外側壁に対して放射方向に圧縮する事を特徴とする管継手用シール。」(特許請求の範囲)、「この発明によれば、外側管の開いた末端の中に入子式に挿入された平面端部を有する内側管を含み、上記内側管の平面端部は外側密封壁を備え、上記の外側管は、その上記の開いた末端に隣接する内側面に沿って放射方向に設けられた軸方向に細長いグループを有し、このグループはガスケット保持手段と、ガスケット密封壁と、前方ガスケット密封壁と後方ガスケット密封壁との中間に配設された一体的圧縮リブとを備え、上記リブは放射方向内向きに、上記グループの内部に突出する様にし、また上記グループの中に配置され、保持部分と密封部分とを備えた弾性ガスケットを含み、上記弾性ガスケットの上記密封部分は上記圧縮リブと上記の内側パイプの上記外側密封壁との間に放射方向に圧縮される様にした管継手が提供される。」(第2頁右下欄16行ないし第3頁左上欄11行)、「保持部18は、組立に際して、または継手が圧力を受けた時に、ガスケット6の転位を防止する。圧縮リブ8は、前方密封壁10と後方密封壁12との間において、放射方向側に懸垂している。ガスケット6は、内側管5の平滑端部4と圧縮リブ8とに密封係合してグループ7の中に配置されている。固い密封継目状態においては、ガスケット6は、内側管5の平滑端部4及び圧縮リブ8のみならず、前方密封壁10と後方密封壁12とも密封係合する事は理解されるであろう。・・・本発明の圧縮リブ8は、固い継手状態と緩い継手状態のいずれにおいてもガスケット6を圧縮する手段を成している。いずれの状態においても、ガスケット6の密封部の厚さy(第4図)が縮小され、ガスケット6は軸方向と周方向に押出される。管継手に圧力が加えられた時、即ちパイプラインに加圧された時、ガスケット6はベルリップ16の方に押され、圧縮リブ8と、前方密封壁10と、ガスケット保持グループ18と、内側壁20と、内側管5の平滑端部4とによって形成されたキャビティを潰す。ガスケット6は前方密封壁10と後方密封壁12とに当接密封する場合と、しない場合があるが、洩れ防止システムを作る為にはベルのこれらの部分に対する密封は必要ではない。・・・継手システムの密封度は圧縮リブ8と平滑端面4に対するガスケット6の圧縮度に依存しているのであるから、これら部材間の最大寸法と最小寸法はガスケット6の寸法yに対して一定の関係を有しなければならない。」(第3頁右上欄2行ないし左下欄18行)と記載されていることが認められる。

乙第4号証の上記各記載、及び第1図、第4図(別紙図面5参照)によれば、同号証の外側管3の開いたベル端部2の内側に形成される部位は環状凹部といえるものであって、同号証には、管継手の環状凹部の壁面に設けた小突起によりシール部材を挟圧してシール効果を高めるようにしたシール技術が記載されているものと認められる。

(b)  第2引用例(甲第6号証)には、「スリーブ12の前端部内周面と管10端部の外周面間にパッキン18を密にはめ」(実用新案登録請求の範囲)、「スリーブ12の前端側の内周面にも浅い周溝17が設けられ、パッキン18がはめられている。このパッキン18は、前記周溝11と管10の先端間の外周面に密着される。」(第3欄6行ないし9行)と記載されていることから、同引用例の管継手のパッキン18は、管10の外周面とスリーブ12の浅い周溝との間のシールを目的として密着状態に装着されるものであること、同引用例の第2図、第3図には、パッキン18がスリーブ12の周溝17に設けられた突起により挟圧されている状態が図示されていることが認められる。

(c)  乙第1号証(日本鋳鉄管協会のカタログ「タイトンダクタイル管」 昭和49年3月発行)の第1頁図-1及び図-2、及び同第2号証(特開昭58-692号公報、昭和58年1月5日公開)の第2図には、それぞれ管継手の外側管(受口)の環状凹部の壁面に突起を設け、その突起と係合する溝をシール部材の外周面に形成したシール構造のものが図示されていること、乙第1号証には、ゴム輪(シール部材)について、「良質のゴムでできた硬いヒール部と、やわらかいバルブ部からなっています。」と記載されていることが認められるところ、これらの管継手においてはシール部材の外周面に溝が形成されており、ヒール部は硬い材料であることからすると、上記突起が持つ第1の技術的意義は、シール部材の保持にあるものと認められるが、突起の存在によって、突起がない場合に比べて、その部分のシール部材はより圧縮され、シール効果が高められているものと考えられる。

(d)  以上、第2引用例及び乙第1、第2、第4号証により認定したところによれば、シール部材を用いた管継手において、シール部材を挟圧してシール効果を高めるために、シール部材を収納する管継手の環状凹部の壁面に小突起を設けることは、本願出願前周知の技術であると認めるのが相当であり、これと同旨の審決の認定に誤りはないものというべきである。

<2>(a)  原告は、乙第4号証の考案は、本願考案のようなリング体を用いない、本願考案の管継手とは異種形式の継手に関するものであるし、同号証の考案のシール効果は本願考案の場合と比べて決して高いものではない旨主張する。

確かに、同号証の管継手は、本願考案のようなリング体を用いた管継手とは形式を異にするが、両者は、環状凹部の壁面に突起を設け、その環状凹部にシール部材を装着した外側管に、シール部材を圧縮するようにして内側管を嵌挿したセルフシーリング形式のものである点において共通するものであり、前記認定のとおり、同号証には、管継手の環状凹部の壁面に設けた小突起によりシール部材を挟圧してシール効果を高めるというシール技術が記載されているのであるから、同号証をもって、このような技術が周知のものであることを認定するための一資料とすることは何ら妨げられないものというべきである。

(b)  原告は、第2引用例の管継手においては、突起の直下の位置でパッキン(シール部材)の下面が折れ曲がっていること、あるいは、テーパ面の形成によりパッキンの肉厚が減じられていることを理由として、突起は、パッキンの横滑りを止めるにすぎず、シール効果を発揮する挟圧効果を生じるものではない旨主張する。

しかし、第2引用例の第2図、第3図によれば、同引用例のパッキンの下面は折れ曲がっているのではなく、管の挿入を容易にするためのテーパ面が形成されているものであることは明らかであり、また、テーパ面の形成によりその部分のパッキンの肉厚が減じられているからといって、スライド管の挿入による挟圧効果が生じないというものでもないから、原告の主張は採用できない。

また原告は、第2引用例の管継手においては、パッキンの上側表面に溝が形成されており、この溝と突起とが互いに嵌合して位置決めの作用をなすものであって、突起によってパッキンの挟圧効果は生じないとみるべきである旨主張する。

仮に、第2引用例のパッキンの上側表面に突起と係合する溝が形成されており、この突起が持つ第1の技術的意義がパッキンの保持にあるとしても、突起の存在によって、突起がない場合に比べて、パッキンはより挟圧され、シール効果は高められているものと考えられるから、原告の上記主張は採用できない。

(c)  原告は、乙第1、第2号証記載のものにおける突起は、パッキングの硬い(圧縮変形し難い)ヒール部の溝に嵌合しているものであって、パッキングの溝部分が突起によって挟圧変形されるものでは決してなく、この部分においてシール効果を高めているということはない旨主張するが、上記<1>(c)に述べた理由により採用できない。

(d)  ちなみに、本願考案の実用新案登録請求の範囲には、シール部材(13)の構造についての記載はなく、また、シール部材の外周面に突起と係合する溝を予め形成していないものに限定されるものと解すべき記載もなく、本願明細書の考案の詳細な説明及び図面を参酌しても、本願考案に係る可撓継手のシール部材は、その外周面に突起と係合する溝を予め形成していないものに限定されるものと解することはできない。したがって、シール部材の外周面に溝を予め形成しないものに限定していない本願考案において、突起が、シール部材を保持することの外、シール部材を挟圧してシール効果を高めるというのであれば、仮に第2引用例のパッキンの上側表面に溝が形成されているとしても、当該パッキンも本願考案と同様の効果を奏するものと認めるのが相当であり、乙第1、第2号証のシール部材についても同様のものと考えられる。

(3)  上記(2)のとおり、シール部材を用いた管継手において、シール部材を挟圧してシール効果を高めるために、シール部材を収納する管継手の環状凹部の壁面に小突起を設けることは、本出願前周知の技術であり、また、前記(1)のとおり、内周面にロックリング用の環状空間部とシール部材用の環状凹部を有するリング体を用いた可撓継手において、環状凹部の両端の仕切壁部間の内周面に小突起を形成することが本出願前公知の事項であるから、リング体を用いた第1引用例の可撓継手において、そのリング体の内周面にロックリング用の環状空間部と環状凹部とを形成しようとする場合、本願考案のように環状凹部の両端の仕切壁部問の内周面に小突起を形成するようなことは、シール部材を挟圧してシール効果を高めるために、当業者が必要に応じてなし得る程度のものと認めるのが相当であり、この点についての審決の判断に誤りはないものというべきである。

(4)  次に、小突起の位置を本願考案のように仕切壁部間の内周の開口側寄りにすることは、スライド管をリング体の内部に嵌挿する際シール部材が環状凹部から外れたり抜け出たりしないようにするため当然考慮される事項であり、この点に考案が存在するとは認められないとした審決の判断の当否について検討する。

<1>  突起が仕切壁部間の内周の開口側寄りに位置している場合には、スライド管をリング体のシール部材に嵌挿すると、開口側寄りのシール部材は、スライド管の先端と仕切壁部間の内周面との間で圧縮変形され、その際、シール部材は突起にくい込まれ、あるいは、シール部材の外周面に溝が形成されている場合には溝と突起が係合して、シール部材は仕切壁部間の内周面に保持され、引き続いてスライド管の先端を奥の方まで嵌挿しても、シール部材は突起により引っかけられて保持されているため、あるいは突起と溝の係合により保持されているため、環状凹部から外れたり抜け出たりすることが防止されるものと考えられる。そして、突起による上記のような保持機能を得る上で、突起が開口側寄りに位置する方がより有利であることは、当業者において容易に想到し得ることと認められる。

ちなみに、前掲乙第1号証には、環状凹部の壁面に突起を設け、その環状凹部にゴム輪(シール部材)を装着した外側管(受口)に、シール部材を圧縮するようにして内側管(さし口)を嵌挿した管継手において、該突起が環状凹部の開口側寄りに形成されているものが示され(第1頁図-1、図-2)、「ゴム輪のみぞは受口内面の突起で完全に固定されていますので、挿入時にゴム輪がはずれたり、ねじれたりしません。」(第2頁)と記載されていること、同第2号証の第2図には、管継手において、突起の位置が環状凹部の開口側寄りに形成されたものが示されていることが認められ、これらの事実によれば、スライド管をシール部材に嵌挿する際、シール部材が環状凹部から外れたりねじれたりすることを防止するために、突起の位置を環状凹部の開口側寄りにすることは、本出願前周知の事項であると認められる。

したがって、審決の上記判断に誤りはないものというべきである。

<2>  原告は、突起が仕切壁部間の内周の開口側寄りに位置している場合は、開口側寄りに位置していない場合に比べて、開口側の仕切壁部間と突起との間の長さないし体積が小さく、その部分のシール部材は圧縮されにくく、スライド管が入り込むことができる大きさにまでシール部材の内径が拡径しにくいため、スライド管をシール部材に嵌挿するための大きな力が必要となり、この大きな力で押されるスライド管の先端部が、リング体の内径より内方に突出しているシール部材の内周部を引っかけて、スライド管の挿入方向にシール部材を押し出しやすくなり、結局、突起が仕切壁部間の内周の開口側寄りに位置している場合には、スライド管をシール部材に嵌挿する際に、シール部材が環状凹部から外れやすくなったり抜け出やすくなったりする旨主張する。

しかし、シール部材が同一材質であって、圧縮率が同じであれば、シール部材の圧縮されにくさは、開口側の仕切壁部間と突起との間の長さないし体積の大小とは関係がないものと考えられるから、原告の主張は採用できない。

また原告は、本願考案のように、ことさら外周面に溝を形成していない広幅のシール部材を用いて、シール部材が環状凹部から外れたり抜け出たりすることを防止するために、小突起の位置を仕切壁部間の内周の開口側寄りにすることは当然考慮される事項ではないとして、本願考案がシール部材の外周面に突起と係合する溝を予め形成していないものであることを前提とする主張をしているが、前記(2)<2>(d)において述べたとおり、本願考案に係る可撓継手のシール部材は、その外周面に突起と係合する溝を予め形成していないものに限定されるものと解することはできないから、原告の主張はその前提において失当であって、採用することができない。

(5)  以上のとおりであって、相違点<3>についての審決の判断に誤りはなく、取消事由1は理由がない。

3  取消事由2について

(1)  第3引用例(甲第3号証の2)記載の考案は「球型伸縮自在の接手」に関するものであり、同引用例には、2分割型ではあるが、その内周面を球状凹弧面に形成した継手本体(本体14)と、内周面にシール部材(オーリングパッキン11)用の環状凹部(凹溝10)とストップリング12用の環状空間部(空間部9)とを形成したリング体(ボールリング6)と、スライド管1とから成る可撓継手において、リング体を、その内周面に形成した環状凹部が継手本体の開口側に位置するように継手本体の球状凹弧面に嵌着して、環状凹部の両側の仕切壁部(凹溝の両側周壁部)によりスライド管を支持している構造が図示されていることが認められ(別紙図面4参照)、この事実によれば、上記のような構造は、本出願前公知の事項であると認められる。そして、甲第3号証の1(第3引用例記載の考案の実用新案登録願書)には、「ストップリングを止ビス13でスライド管1の末端に固定したので、ストップリングが戻ったりスライド管が脱出するのを防止することができ」(第4頁13行ないし16行)と記載されていることや、その名称から考えて、上記ストップリング12は、本願考案におけるロックリング(14)と同様に、スライド管の移動に際してスライド管がリング体から抜け出るのを防止する機能を有するものであって、ロックリング(14)に相当するものと認められる。

そうすると、リング体を用いる第1引用例の可撓継手において、リング体としてその内周面にシール部材用の環状凹部の外にロックリング用の環状空間部を形成したリング体を用いる場合、本願考案のようにそのリング体の環状凹部が継手本体の開口側に位置するようにリング体を継手本体の球状凹弧面に嵌着させ、環状凹部の両側の仕切壁部でスライド管を支持させるようにすることは、リング体の嵌着の一実施態様にすぎず、この点に格別創意があるとは認められず、また作用効果も構造上自明のものにすぎないとした審決の判断に誤りはないものというべきである。

そして、第3引用例の可撓継手においても、そのスライド管は、前記のとおりリング体の内周面に形成された環状凹部の両端の仕切壁部で支持される構造のものであるから、その仕切壁部間の長さ、即ち環状凹部の幅はスライド管を支持するのに必要な広幅になっているものと認めるが相当であって、この点は、本願考案において環状凹部を比較的広幅としていることと実質的に変わるところはないものというべきであって、これと同旨の審決の認定、判断に誤りはない。

(2)  原告は、第3引用例の考案は、常に、凹溝周壁部と、ストップリングが当接している部位とでスライド管を支持するように構成されていることは明らかであって、凹溝の幅がスライド管を支持するのに必要な広幅であることは同引用例には全く示されていないし、ストップリングは、スライド管を支持する機能を有しない本願考案のロックリング(14)に相当するものではない旨主張する。

前掲甲第3号証の1には、「ストップリング12がボールリングの空間9の内を摺動自在とする。」(第3頁12行ないし14行)と記載されているが、この記載から直ちに、第3引用例のストップリングが、スライド管がボールリングから抜け出るのを防止するための機能をもつ外に、スライド管を支持する機能をも併せ有するものと解することはできない。仮に、原告の主張するように、第3引用例のものにおいて、ボールリングの端部がスライド管から外れた場合、凹溝の両端の周壁部とストップリングが当接している部位とでスライド管を支持しているものであるとしても、凹溝の両端の周壁部は、凹溝に嵌合されたオーリングパッキンを挟んで、スライド管の軸線方向に適宜の間隔を置いてその外周面に当接しているのであるから、両周壁部は、スライド管に対してそれぞれ別個の当接支持部を形成しているものということができる。したがって、凹溝の両端の周壁部間の長さ、即ち環状凹部の幅はスライド管を支持す1るのに必要な広幅になっているものと認めるのが相当である。ちなみに、第3引用例の図面に示されている凹溝の幅とボールリング体の幅との比は、本願の図面における環状凹部の幅とリング体の幅との比とほぼ同程度であることがi認められる。

したがって、原告の上記主張は採用できない。

(3)  以上のとおりであって、相違点<4>についての審決の判断に誤りはなく、取消事由2は理由がない。

4  取消事由3について

(1)  原告は、本願考案は、リング体(6)の開口一端側に比較的広幅の環状凹部(22)を形成したことに加えてリング体(6)の開口他端側に環状空間部(8)を形成したことから、リング体(6)の両側開口端間の幅が広くなり、これら広幅リング体(6)に形成されている各空間(8)、(22)を仕切る壁(リング体(6)の両端の壁と、中央部近くのストッパー(9))により、常態でスライド管(4)を力学的に3点支持するので安定して支持することができ、シール部材に無理な力が加わりにくくなって、第1の止水効果を良好に発揮できる旨主張する。

しかし、本願考案は、環状凹部(22)、環状空間部(8)を仕切る壁(リング体(6)の両端の壁と、中央部近くのストッパー(9))がスライド管(4)を支持することを、その要旨としていないから、原告の上記主張はその前提において失当である。

なお、本願明細書には、「殊に本考案においては、上記のようにスライド管(4)の長さを短くできながらも、リング体(6)とスライド管(4)の間のシール部材(13)を装着する環状凹部を比較的広幅に形成して、幅広く間隔を隔てた両側部の仕切壁部と環状凹部の内周面及びスライド管(4)の外周面とでシール部材(13)を囲繞していることと、球可撓継手であることが相俟って、管継手部のこじれもなく、良好な水密性が保たれるとともに、前記の幅広い両仕切壁部によってスライド管(4)を支持することとなるので、常態ではリング体(6)の両側開口端間の幅全体の広い幅でスライド管(4)を支持しながら、例え環状空間部(8)のリング体(6)の端部側のストッパ(9)がスライド管(4)から外れても、前記環状凹部両側の仕切壁部だけでもスライド管(4)を安定して支持することができる利点がある。」(甲第2号証の2第7頁8行ないし19行、同号証の3第2頁6行ないし第3頁4行)と記載されていることが認められるが、前記3において説示したとおり、第3引用例に記載の凹溝の両端の周壁部は、スライド管に対してそれぞれ別個の当接支持部を形成しており、スライド管の支持機能において本願考案の環状凹部仕切壁部と特に差異はないものと認められ、したがって、原告主張の効果も格別のものということはできない。

(2)  原告は、本願考案は、環状凹部(22)の両仕切壁部間の内で継手本体開口部寄りに形成した突起(21)によって、シール部材(13)をスライド管(4)の外周面に挟圧させるべく構成したことにより、例えば、突起(21)を環状凹部(22)の両仕切壁部間の(開口側寄りではなく)中央部に配置して、その位置でシール部材(13)をスライド管(4)の外周面に挟圧させるべく構成した場合よりも、一段と優れた第2の止水効果を発揮できる旨主張する。

しかし、本願明細書には、「このシール部材(13)は、第1図に示すように前記環状空間部と並設した外側開口端寄りに形成した比較的広幅の環状凹部に嵌装してある。そしてこの環状凹部の幅内における外方寄りの内周面にシール部材(13)の水密性をよくするための突起を形成してある。」(甲第2号証の2第4頁末行ないし第5頁6行)、「幅広いシール部材(13)で良好に水密性が保てるとともに、シール部材(13)が突起により挟圧されているので、確実な水密性を維持することができ、例え継手部で屈曲してリング体(6)に対してスライド管(4)が摺動してもシール部材(13)が突起によって位置保持されるので幅の広いシール部材(13)が移動したり、涙れたりすることがなく、また水圧が高ければ高い程シール部材(13)の側方からの水圧によりシール部材(13)が圧縮されて水密性が大きくなるので、大きな水圧であっても良好な水密性を発揮することができる利点がある。」(同号証第7頁末行ないし第8頁13行)と記載されていることは認められるが、原告の主張するような第2の止水効果についての記載はないし、第2の止水効果と環状凹部の内周面における突起の位置との関係についての開示はもとより示唆するところもない。

原告は、第2の止水効果は本願考案の構造に内在しているものである旨主張するが、本願考案において流体の洩れ出しが生じた場合に原告が主張するような第2の止水効果が生じるとしても、それは本願考案の構造上当然予測し得る程度のものであって、特に顕著なものということはできない。

なお、本願明細書記載の上記効果は、本願考案の構成により当然予測し得ることであって、格別のものとすることはできない。

次に、本願明細書には、「スライド管(4)とリング体(6)との間のシールをリング体(6)の開口端側に施して、その奥部の環状空間部(8)の両端に形成したストッパ(9)、(9)に対してスライド管(4)の端部に装着したロックリング(14)によりスライド管(4)の抜け止め並びに過度の移動を規制してあるので、スライド管(4)とリング体(6)との間の水密性を保ちながら、スライド管(4)の長さを極力短くすることができる。」(甲第2号証の2第6頁19行ないし第7頁5行、同号証の3第2頁6行ないし8行)と記載されていることが認められるが、上記効果は、シール用の凹溝10をボールリング6の開口端側に施し、その奥部にストッパーリング12が摺動する空間部9を形成した第3引用例に記載の管継手においても有している構造上自明のものであるから、顕著なものということはできない。

(3)  以上のとおりであるから、審決は本願考案の顕著な作用効果を看過した旨の原告の主張(取消事由3)は理由がない。

5  よって、原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊藤博 裁判官 濵崎浩一 裁判官 押切瞳)

別紙図面1

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別紙図面2

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別紙図面3

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別紙図面4

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別紙図面5

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別紙 参考図

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